失
題
久
坂
通
武
(江
月
齋
) |
|
皇
國
の威
名
海
外
に鳴
る
誰
か甘
んぜん烏
帽
犬
羊
の盟
廟
堂
願
わくば賜
へ尚
方
の劍
直
ちに將
軍
を斬
って聖
明
に答
えん |
|
皇國威名海外鳴
誰甘烏帽犬羊盟
廟堂願賜尚方劍
直斬將軍答聖明 |
|
|
語 釈 |
○皇国==すめらみくに。天皇の統治される国。日本をいう。
○威名==武勇のほまれ。
○海外==海の外。外国。
○誰甘==誰が満足できよう。我慢できないの居。
○烏帽==普通は隠者のかぶる黒い帽子をいい、日本では 「えぼし」 をいう。しかし、ここではそのいずれにも当らない。外夷を指す。
○廟堂==朝廷をいう。
○尚方剣== 「尚方」 は天子の御物を造る所、又その官名。御物を納める倉。ここでは 「御物」 と同じ意味。
○聖明==天子を称する敬語。
|
|
題 意 |
この詩は一に 「入京師」 と題するが、内容からみて、文久三年五月十日、大和行幸攘夷親征詔勅宣布直前の作であろう。 |
|
通 釈 |
日本国民の武勇の名は海外にまで鳴り響いているのである。誰か烏帽を戴く犬羊の夷と同盟の宣を結ぶことに甘んずる者があろうか。(勅許もない条約を結んで得意になっているのは将軍である。征夷大将軍の名が泣くだろう。不埒千万な話である。)願わくば朝廷から尚方の剣を賜りたいものである。そうすれば、すぐにでも将軍を斬って、天皇の攘夷の思し召しにお答えするであろう。 |
|
余 説 |
詩意は極めて明瞭。王愾に敵する、盛んなりといわねばならぬ。日本危機の感を抱いて、報告の一念に燃えていたことがわかる。この意気と気概があってこそ、中国の二の舞を踏まなかったのである。徒らに今日の見に立って、その識を偏狭なりとし、或いは単なる豪語と見ては、あまりにも同情がなく、軽薄皮相の見で、読史家の態度にも欠けていよう。
|
|