ふり返ってみれば私の人生も既に五十余年が過ぎてしまった。 過ぎ去った自分も含めた人間社会のことは、是も非もすべて夢の中のことのように思われる。 自分は山の庵に住んでいる身であるが、夜半物思いにふけっていると、五月雨が物寂しく窓に降り注いで、いつまでも眠りに就くことが出来ない。