南朝の頃からあったと思われる古木も淋しく勇靄に包まれている。 思えば楠公が南朝に忠節を尽くして戦った時から、六百年の歳月が夢のように過ぎ去り、当時をしのぶべくもない。 幾度か天に向かって尋ねたが、天も当時を語らず、金剛山の楠公の史跡はいたずらに夕暮れの雲が去来しているのみである。