今自分は井伊大老を討とうと心に決して、故郷水戸を出ようとしている。 この別れは死別と同じことで、再び帰りことは出来ないであろう。 然るに弟や妹はこれを知らないで、わが袖を引いて、 「兄上はいつお帰りになるのですか」 と問うのである。