吉野に花見に訪れる人々は、酒に酔ってあたりを踏み散らして歩きこそすれ、一人として南朝をしのんで自分と感慨を同じくする者はいない。 ことに恨みとするところは、後醍醐帝の御陵の上を吹く風に散る花びらまでもが、北の都の方角に向かって飛んでいることである。