ここ灘の酒造家の白壁は、晴れ渡った海の色に映ってみごとな景色である。 山陽道の乾いた砂路や水のない泥河を渡ってきたが、こうした風景は昔と変わることはない。 しかし、自分は昔のままではなくなった。大楠公の墓のそばをたびたび行き来するうちに、すでに老境に入ろうとしている。