あかつきはつ
橋本 左内
天保五 (1834) 〜 安政六 (1859)

残月滴露濕人袂

暁風吹髪覺秋冷

忽驚大蛇當路横

抜剣欲斬老松影
残月ざんげつてき ひとたもと湿うるお
ぎょう ふう はつ いてしゅう れい おぼ
たちまちおどろだい じゃ みちあた ってよこ たわるを
けん いて らんとほつ すればろう しょうかげ

有明の月はほの明るく、夜露が人の袂を湿す明け方近くに旅舎を発って街道を歩いていくと、髪を吹く風は冷やかで気持ちが良い。
ふと、目の前に大蛇が横たわっているのが見え、驚いて剣を抜いて斬りかかろうとしたところ、こはいかに、それは老松の影ではないか。