すべての花が散り落ちた冬景色の中で、ひとり梅だけが美しく咲きほころびて、ここ山中の小園の風情を独り占めにしている。 その枝は或は横に或は斜めに清らかな水に影をうつし、また、ほのかな香りを漂わす月の光の淡いたそがれ時である。 霜のおりる頃、鳥は地上におりようとして先ずあたりをうかがうかのように見まわす。 花のまわりに舞っている白い蝶は、もしこのことを知ったならば、気の遠くなる程驚くことであろう。 この清楚で気品の漂う梅を眺めながら、詩を作り微吟していると、楽器や酒樽を前にするような必要もなく、誠によい気分である。