(通 釈) 亀山は往時に変わらず、昔のままに隅川の流れの中央に立っている。 この亀山の地は、その昔、毛利侯と島津氏が相争った古戦場であると伝えられているが、今日、こうして水辺にたたずめば、美しいほこや鮮やかな旗を立てて並べ戦ったことなど、一場の夢にすぎぬように思われる。 ふと見れば、青白い月の光の下、あしの花が咲き乱れている。
○隅川==淡窓の住んだ、日田市南部を流れる川。 ○亀山==亀王山ともいう。 ○宛==昔のままに、の意。 ○毛侯==毛利侯。毛利高政をさす。 ○古戦場==天正十四年 (1585) 十月ごろ、南方の島津家久が豊後に侵入した際に、別働隊として、肥後方面より岡城を経て大分郡に進出した島津義弘と合戦があったらしい。 ○画戟==美しい装飾を施したホコ。 ○彩旌==色鮮やかな軍旗。 ○芦花==あしの花。 ○発==花の咲くこと。 ○蒼蒼==青白いことをいう。