さか もと りょう おも
河野 天籟


ばく うん おお うて まさかたむ かんとす

なん かい りょう てい きょうかけ

いち きょう ふう みき るといえど

しんたい ぎょう きみ って
幕雲掩日日將傾

南海臥龍帝京翔

一夜狂風雖折幹

維新大業頼君成

(通 釈)
徳川幕府の黒雲が、わが日本を覆い、国運の傾こうとする時、南海土佐の今孔明と称される龍馬は、大志を抱いて立ち上がり、大政奉還によって新しい時代を招来せんとして京都を駆け巡った。だが、ああ、無念。一夜狂った風が、この大樹の幹を折ってしまった。 坂本龍馬が凶刃に斃れたのだ。だが、大政奉還は実現し、維新は成った。その大業は龍馬あってこその成功だったのである。

○幕雲==熟語としてはない。作者の作った語であろう。
世の中を暗く覆う徳川幕府の黒雲、の意。
○日==天子を意味する。
○南海==坂本龍馬之の出身地土佐。
○臥龍==坂本龍馬。
もと諸葛孔明を称する語。ここでは孔明のように乱世にあって智謀を廻らし活躍した人、意で龍馬をいう。
○翔==縦横に翔け巡って活躍する。
○狂風==龍馬に敵対し、龍馬を斬り殺した一派。
「幹を折る」 との関連で狂風に見立てたもの。
○幹==坂本龍馬をたとえた。 ○君==坂本龍馬。
○成==成功。


(解 説)
幕末、維新の大業への道を招いた英傑、坂本龍馬をたたえら作品。
作者は、龍馬について、 「志半ばにして凶刃に斃れたものの、もし、龍馬なくんば大業は成らなかった」 と、功績をたたえている。
(鑑 賞)
坂本龍馬の功績に思いを致し、志半ばにして凶刃に斃れたことに深い同情を寄せ、併せて、その大業に尽くした業績をたたえんとして作った詩である。
坂本龍馬を、臥龍に例え、幹と称するところは、いかにも龍馬の豪放な性格や、維新の中心的行動を表現し得ており、同時に作者の龍馬に対する尊敬、親愛の情がうかがわれる。